シングルライフを謳歌している独身者も、老後の暮らしには不安を覚えるだろう。「お一人様」の老後生活にはいくら必要か。まずは単身高齢者の実態を見てみよう。

「お一人様」の老後は 貯蓄を取り崩している

総務省の2012年家計調査によると、高齢無職単身世帯では1カ月の平均支出は生活費と税・社会保険料で15万3830円。一方、年金などの収入は12万1542円にとどまり、差し引き3万2288円の赤字だ。不足分は貯蓄を取り崩して補っているというのが、お一人様の老後の家計イメージだ(左表)。

仮に30年分で試算すると約3万2000円×12カ月×30年=1152万円。長生きした場合、生活費だけでもそれだけの不足を補う貯蓄が必要になる。なお、高齢無職単身者家計の内訳を見ると、食費が3万2515円に対し、教養・娯楽費がその半分の1万6307円弱と高め。シニアライフをそれなりに楽しんでいるということかもしれない。

ただ最も支出が多い項目は、その他(交際費等)の3万5261円。この中には介護サービス費や自分の小遣い、美容室代なども含まれるが、最も多いのは、冠婚葬祭などの交際費や贈与金などだ。かわいい孫や甥姪に「お小遣いでも」と財布のひもが緩みがちなようだ。




住居費は月1万4996円と少なく見えるが、賃貸であれば家賃が、持家でも固定資産税や管理費等のコストがかかり、個々のばらつきは大きい。保健医療費は8345円となっているが、年齢とともに、あるいは制度改定などによって負担が増える可能性があることを頭に入れておきたい。介護費用も同様だ。

では、自分の老後にはいくら必要なのか試算してみよう。改正高年齢者雇用安定法の導入で65歳雇用が義務づけられたため、65歳からの資金とする。厚生労働省が作成した12年簡易生命表によると70歳時点の平均余命は男性が85・11歳、女性は89・45歳。平均より長生きする場合があるほか、平均余命も上がり続けていることから、95歳まで生きると仮定して老後資金は30年間分を準備したい。

まずは、現在の家計からみて、リタイア後はどの程度の生活費が必要か予想する。住居費は定期的な支出に加え、老人ホームへの入居を考えているなら、入居一時金も見込んでおきたい。自家用車を持っていれば買い替え資金が必要。子どもがいる場合は結婚や住宅資金の援助が予想される。

また、忘れがちなのは親関係の出費。自分がリタイアしても親が存命していることを想定しておきたい。生活費の仕送りや介護の費用負担が発生する場合もある。「夢・生きがい予算」は海外旅行や趣味、その他の夢を実現するために使う費用だ。「医療・介護予備費」は高齢になるほど罹患率や介護リスクが上がるので、生活費で賄えない分を補うため300万~500万円程度用意したほうがいいだろう。

順番に記載し合計金額を記入したら、次は「準備できている資金」として退職金の見込額や、定年後も働く意志がある場合は勤労収入も加える。目安として記入例を記載したが、このケースでは約2000万円不足することになった。この分が定年までに準備すべき金額だ。

持ち家があれば融資が受けられることも

なお、金融資産以外の資産とその評価額を把握しておくことで、実際の準備額を引き下げることができる。記入例は持ち家なので、売却すれば2000万円まで老後資金を準備する必要はない。

持ち家がリバースモーゲージの対象になるなら、マイホーム(主に戸建てが対象)を担保に、自治体や金融機関から「生活費」の融資を受け、亡くなった時点で売却して精算することもできる。都道府県社会福祉協議会が「不動産担保型生活資金貸付制度」として実施しているほか金融機関でも行っている。老後資金が不足したときは、住み続けながら生活費を捻出できることになる。

 

豊田眞弓(とよだ まゆみ)プロフィール

FPラウンジ ばっくすてーじ代表
ファイナンシャル・プランナー、住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー、家計力アップトレーナー

こちらもおすすめ: