Yahoo!コラムで「<新春企画>2020年の住宅ローン金利(変動・固定)はどう動く?」を公開しました。金利の動向に詳しい2名の専門家にアンケートに回答いただいた内容からまとめたものですが、掲載できていない部分もありますので、アンケート回答の全文をこちらに掲載します。

<回答者>
小松英二氏(CFP、経済アナリスト。日銀出身)
深野康彦氏(有限会社ファイナンシャルリサーチ代表)

ご協力くださりありがとうございます。

昨年(2019年)の住宅ローン金利の予想と感想

小松英二氏の回答

<昨年の住宅ローン金利予想>
●2019年の変動金利はどうなる?
2019年の変動金利の水準は、2018年と変わらないと見ている。2020年以降も、インフレ目標の達成の見通しが立たない中で、よほどのことがない限り、水準に変化は見られないのではないか。

●理由
変動金利は、日銀の短期の政策金利が変更されない限り、動きにくい。物価上昇率2%を目指すも、日銀が注視している「生鮮食品を除くCPI総合指数(コアCPI)」は、2018年11月時点で0.9%にとどまり、超金融緩和政策も長期戦の様相を呈している。

●2019年の10年固定・全期間固定はどうなる?
2019年の10年固定・全期間固定は、日銀のイールドカーブ・コントロール(長期金利誘導水準)において「長期金利の水準」の引き上げはできないとの想定のもと、年初の水準から0.2%程度の上下の変動にとどまるのではないか。2020年以降も、「長期金利の水準」の引き上げは困難であると思われることから、2019年年初の水準から大きく動かないのではないか。

●理由
日銀が、「0%のまま不変」としている長期金利の水準を引き上げる可能性はかなり低下したものと思われる。歴史的に、日本銀行の金融引き締め方向への転換は、米国FRBが利上げを続けるか、少なくとも利下げ局面にない環境で行われている(つまり、米国が景気後退で利下げに入ると、日銀の出口戦略の第一歩はタイミングを逸することになる)。米中貿易摩擦が激化し世界景気に暗雲が垂れ込める中、米国FRBの利上げの終了時期はそう遠くないとの観測も出てきている。日本でも、タフな日米貿易交渉が予想され、さらに消費増税も予定される中、「長期金利の水準」の引き上げイメージは描き難くなっている。

●2019年の予想に対する感想
変動および10年固定・全期間固定とも、年初の水準から0.2%以内での低下となり、想定内の結果といえる。ただ、前提として見ていたFRBの利上げの終了は、早々と2019年1月に発表され、その後7月、9月、10月と3回にわたり「予防的利下げ」にまで踏み切ったことには驚かされた。

深野康彦氏の回答

<昨年の住宅ローン金利予想>

●2019年の変動金利はどうなる?
日本銀行が金融政策を変更することは、2019年中はないと考えている。したがって、変動金利型住宅ローン金利水準が変わることはないだろう。金利水準が変わるとすれば、各銀行が優遇幅を変動した場合に限られると思われる。この予想は2020年も変わらないと考えており、また2021年も確信は持てないがその方向性は変わらない可能性が高い。

●理由
2018年7月末の金融政策決定会合で日本銀行は「フォーワードガイダンス」を導入した。同銀行が見直しを含め年4回公表している「経済物価情勢の展望レポート」によれば、2020年度でも消費者物価指数が2%に到達できないと予測されている。このため日本銀行が引き締め方向に金融政策を変更することは2020年まではないと考えている。2019年4月の金融政策決定会合では、2021年の消費者物価指数の見通しが公表されるが、2%到達の見込みが公表されなければ、2021年度も変動金利の水準は変わらないと予想している。

●2019年の10年固定・全期間固定はどうなる?
2018年8月以降に上昇した10年固定・全期間固定だが、2019年前半は再び緩やかに低下していくと考えている。その後は横ばいになると予測しているが、日本銀行の金融政策が変更(微調整)されれば、もう1段階下がる可能性があるかもしれない。2020年以降は景気次第だが、消費税が引き上げられれば、景気後退に直面する可能性も否定できない。そうなるともう1段の金利低下もありえるが、2016年8月の最低金利(フラット35)を下回るまで低下することはないと予想する。月によって上下動はあるだろうが、2018年のような上昇が数カ月続くとは予想していない。

●理由
2018年7月の金融政策で日銀は長短金利操作の変動幅を2倍(±0.20%)に引き上げたが、その背景にあるのは米国の長期金利上昇に影響を受けたと考えている。その米国の長期金利は、3.25%前後でピークを付けた可能性が高いと思われる。再び3%乗せてくる可能性もありえるが、米国の政策金利の引き上げに天井観が見え始めた以上、3.25%を超えは難しいだろう。むしろ、米国に景気減速感が出てきたため、投資家のリスク回避姿勢が高まり長期金利は低下傾向にあり、受けて日本の長期金利も低下している。その流れは2019年も続くと予測しているのがその理由である。米国の長期金利が低下してくると日米の金利差が縮まるため、円安は期待しにくく、むしろ円高になる可能性もある。想定以上に円高が進んだ場合、消費者物価指数の2%達成がさらに遠のいてしまうため、日本銀行は再び変動幅を元に戻す(±0.10%)に戻すかもしれない。

●上記2019年の予想に対する感想
2019年の予想は概ね市場金利、住宅ローン金利の方向観は当たっていたと思われる。ただ、世界の投資家がリスク回避に動いた8月~9月は想定以上に長期金利が低下したのはやや誤算であった。フラット35の金利は2016年8月の過去最低を更新しないだろうと記したが、団信の費用を控除すれば実質過去最低を更新してしまったからだ。消費者物価指数はかなり低下したものの、日銀が動かなかったのもやや想定外であった。日銀は物価よりも為替に政策変更のウエイトを置いていることが鮮明になった気がしてならない。

2020年の住宅ローンの予想(2020年を中心に、2,3年先まで)

小松英二氏の回答

<2020年の住宅ローン金利予想>

●2020年の変動金利はどうなる?
2020年の変動金利の水準は、2019年と変わらないと見ている。その後も2022年頃までは水準に変化は見られないのではないか。

●理由
変動金利は日本銀行の短期の政策金利が変更されない限り動きにくい。物価上昇率2%を目指すも、日本銀行が注視している「生鮮食品を除くCPI総合指数(コアCPI)」は、2019年11月時点で0.5%にとどまり、1年前の2018年11月時点(0.9%)から0.4%低下している。足元のデータからは変動金利の上昇シナリオは描き難い。
・日銀は出口戦略として物価上昇率2%といった目標自体に柔軟性を持たせ、政策金利の引き上げのための環境を整えることが考えられる(ただ、為替など多方面に影響するのでかなりハードルが高い議論である)。一方で、米国大統領選後は、選挙の結果がどうあれ、米中対立(テーマは貿易から先端技術や安全保障へ移行)が継続し、世界経済の下方リスクとなることから、日銀も利上げしにくい環境が続く可能性がある。結局利上げ・利下げが打ち消しあって、動きづらくなるのではないか。

●2019年の10年固定・全期間固定はどうなる?
2020年の10年固定・全期間固定は、日本銀行のイールドカーブ・コントロール(長期金利誘導水準)が大きくは動かせないとの想定のもと、年初の水準から小幅な変動にとどまると見ている。その後数年も今の水準から大きく解離する可能性は低いのではないか。

●理由
・今年の日米欧の中央銀行は緩和基調を続ける見通しで、長期金利は今の水準から大きく乖離することはないのではないか。
・世界的に不透明感が広がる中では2021年以降の長期金利を見通すことは極めて困難である。世界経済が力強く回復基調をたどるとともに、米中対立が氷解するようなことがあれば、日米欧の長期金利が上昇するといったシナリオも描けなくもないが、相当に狭い道だと思われる。日本の長期金利は「今の水準から大きく乖離しない」といった見方の蓋然性が高いのではないか。

深野康彦氏の回答

<2020年の住宅ローン金利予想>
●2020年の変動金利はどうなる?
2020年も店頭表示の変動金利が変わることはないだろう。あるとすれば個々の金融機関が優遇幅を見直すことに伴う変動以外は考えにくい。その先を見通しても2~3年間は変動金利の金利(店頭表示金利)が変わることは予想していない、つまり低位安定が継続すると思われる。

●理由
物価の上昇が日銀の目標である2%に達しないうえ、最も短い景気循環である在庫循環が2020年の終盤から2021年前半にピークを打つ可能性がある。ピークを打てば2021年から世界景気は減速していくだろう。その後、1年半~2年経たないと在庫循環は底打ちとならないと予想している。この前提に立てば2022年頃までは日銀の金融政策に変更無し、あるいは想定以上に景気の悪化や円高が進めば追加緩和も視野に入ってくる可能性も否定できない。景気が良くなり、日銀が金融引締に動けるようになるのは早くても2023年だろう。少なくともそこまで変動金利は動かないと予測している。

●2019年の10年固定・全期間固定はどうなる?
日本銀行の金融政策に変更はないが、10年固定や全期間固定の指標となる長期金利はそれなりの幅で動くことが予想される。このため歴史的に見れば低金利を継続するが、長期金利の動きに合わせてある程度の上下動を繰り返す動きになるのではないか。ただ、10年固定、全期間固定共に過去最低を更新することは考えにくい。また本格的に上昇することもないと考えている。

●理由
長期金利の動きは日銀の金融政策よりも米国の長期金利に連動する傾向が2019年から鮮明になりつつある。2020年の米国は景気の後退懸念が2019年のように高まることはなく、景気は強含む可能性がある。このため株式売り債券買いという2019年前半から秋口に起こった資金の動きは起こらなく、むしろ2019年の逆、株式買い債券売りの資金の動きが起こり米国の長期金利が2.5%程度まで上昇する可能性がある。その動きに連動して日本の長期金利も0.1~0.2%程度まで上昇するかもしれない。上昇しても日銀が許容する範囲をそれることはないため想定内の動きといえるだろう。10年固定、全期間固定は長期金利に連動するためある程度上昇するのは仕方の無いことと考えたい。ただ、1年を通して見ると2019年が低下バイアスがかかった反動で、2020年はやや上昇にバイアスがかかると予想。2019年のような急低下局面は来ないと思われてならない。

もし2020年にご自身が住宅ローンを新規に借りるなら?

小松英二氏の回答

●借りるなら?
「固定金利」
●理由
・固定金利、変動金利とも歴史的に極めて稀な低金利である。とりわけ、固定金利は長い時間軸で歴史的な低金利の恩恵を受けられる魅力がある。
・変動金利は、その動向を注視する必要があるなど緊張を伴なうが、固定金利はその緊張から解放される。”

深野康彦氏の回答

●借りるなら?
「変動金利」
●理由
日本銀行が政策金利を上げることは数年間は考えにくい。株価こそ上がっているが、政府の経済政策は整合性がないことから、景気回復に伴う金利の上昇は令和時代前半に期待できないから。

住宅ローン選びは自己責任で!

以上がアンケートの全文です。
お2人の2020年の予想をまとめると、
・変動金利の店頭金利は2022年ごろまで変わらない
・10年固定や全期間固定は大きく上昇・低下することはない
という予想になりそうです。

しかし、予想はあくまでも予想にすぎませんので、住宅ローン選びをする際には、自己責任で行ってくださいね。

 

住宅ローン金利でお悩みの方へお知らせ
ムダな支出を削減する方法の1つに住宅ローンの借り換えがあります。ただし借り換えの場合はコストがかかることも忘れてはいけません。
・コスト含めてもメリットがあるかどうか?
・すべての住宅ローンの中で最も有利な商品は?
MOGE CHECKを利用するとこれらを無料でチェックできます。