8020運動というのをご存じでしょうか? 80歳になっても自分の歯を20本以上残そう、という健康のバロメーターにもなる目標を推進する運動です。そのためには、子供のころから歯磨きをしっかりして虫歯を予防し、口腔内を清潔に保つ習慣づけをして、歯を大切にすることの大切さを身に着ける必要があります。

この運動で言えるのは、若いころから歯を大切にすることで実現するのだということ。50代、60代になって、歯の調子が悪くなり始めてからではやや遅いということです(もちろん、気づいた段階から気を付けることは大事です!)。
40代よりも30代、30代よりも20代、20代よりも10代・・・と、意識付けは早いほどいいことでしょう。乳幼児や子供の歯の管理は親のしつけ力が大きいと言えますが、自分で気づいて取り組むのはやはり、早いに越したことはありません。

603000(ロクマルサンゼン)運動とは?

老後資金を心配する10代、20代が増えているのを消費の面から心配するエコノミストもいますが、それは当たり前のことでもあると思います。老後不安が蔓延する社会の空気が、敏感な若者の感受性に影響を与えないはずはないのです。
ただ問題なのは、そこには漠然とした底なしの不安しかないのが問題なのだと思います。

「8020運動」同様、家計の永続性から考えた「目標」があると、わかりやすいのではないかと思い続けてきましたが、実際の相談業務の中で浮かんだのが、この「603000(ロクマルサンゼン)運動」です。
老後に自助努力が必要なことは言うまでもありませんが、指標がなかったのが、より不安を増大しているのかもしれません。「60歳時点の正味財産」の目安を示すことで、「80歳で20本の自分の歯」を目指すのと同様に、大きな羅針盤になるものと思います。

「603000」は「60歳で3000万円」を示しています。大まかな目安にすぎませんが、ご夫婦2人で、60歳時点で3000万円以上の「正味財産」を目指すことは1つの指標として大きな役割を果たすと思います。
ここで注意したいのは、あくまでも「正味財産」だということ。我が家の正味財産を知るには「家計のバランスシート」を作成する必要があります。

「家計のバランスシート」を作成しよう

「50代・家計見直し術」の本の中でも書きましたが、アラフィフさんから老後資金の準備について相談を受けた時にまずやっていただくことは資産の棚卸です。我が家にはどんな資産がどれくらいあるのか、しっかり把握するところから始めます。

預貯金はどれくらいあって、投資系の資産は今どうなっているのか。不動産の価値は?車は?そのほかどんな資産があるのか? などを整理していきます。
それを下記のような家計のバランスシートを作成することで、正味財産についても把握できます。わが家の資産状態はプラスなのか、債務超過に陥っていないか、家計の健康状態もチェックできます。

さっそく、「バランスシート」を記入してみましょう。

<1>左ブロックに保有する資産とその額を記入

土地や建物などの不動産は、数字の記入が難しいかもしれませんが、今もし売却したらいくらくらいになるかで記入しましょう。近隣の売却事例などから推測するといいでしょう。

金融資産も記入します。ここでは、金融資産の性格に合わせて次の2つに分けています。定期預金や貯蓄型保険など安全重視で運用しているものなどは「安全性資産」、株式や投資信託、外貨預金などで運用しているものは「投資資産」としましょう。

保障のために入っている生命保険の中にも、解約すると解約返戻金が出るタイプがあるので、わかれば現状の解約返戻金を記入してみましょう。

<2>右ブロックは負債について記入

住宅ローン、マイカーローンのほか、カードローンやキャッシング、親からの借入、その他の借金がある場合は、その他の欄に記入しましょう。

負債額でも、マイナス(-)をつけずに記入します。住宅ローンが2500万円なら、「2500万円」と記載します。

<3>資産合計と負債合計を計算

資産の合計①、負債の合計②を記入します。

<4>「正味財産」を計算

資産合計①-負債合計②を正味財産③の欄に記入します。プラスの場合は+、マイナスの場合は-をつけましょう。

<5>左右の合計は合っている?

負債合計②+正味財産③の金額を右下の合計欄④に記入します。左側の資産合計①と右側の合計④が一致しているかを確認してください。一致していない場合は正味財産③が違っている可能性があるので、を確認してください。

 

正味財産を把握

正味財産がプラスなら、借金を差し引いても資産が形成されていることを意味します。マイナスなら、現在、資産よりも債務(借金)の方が多い「債務超過」の状態にあるということになります。頭金をあまり入れずに住宅ローンを借りて、繰上返済を行っていない人などは、この債務超過の状態に陥っている可能性があります。

また、正味財産額はどれくらいでしょう? 思ったより少ない場合は、そもそも資産があまり多くない、負債が多い、のどちらが原因でしょう? 資産があまり多くない人は、家計を見直して貯蓄に精を出すことが重要になります。負債が多い人は、ローンの繰上返済などを行って、負債を減らす方向に持っていきたいもの。

「603000」を実現するには?

「正味財産」の意味は理解いただけたかと思いますが、話を戻しますが、「60歳で3000万円以上の正味財産」を目指すとします。退職金や自分で加入している個人年金保険がある方はそれも含めます。
公的年金は含めない前提としています。「公的年金で不足する分や、老後のライフイベントの分として、最低3000万円は残しましょう」というコンセプトになっていますので。

途中、住宅取得や子どもの教育などさまざまなライフイベントがありますが、それも乗り越えて、資産を実現する必要があることを忘れないようにしましょう。
特に、末子が遅く生まれたご家庭では、60歳時点で教育が終わってない可能性もあります。その分は、潜在的な負債と捉えて、3000万円とは別枠で資金を確保しておきましょう。

 

豊田眞弓(とよだ まゆみ)プロフィール

FPラウンジ ばっくすてーじ代表
ファイナンシャル・プランナー、住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー、家計力アップトレーナー

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