住宅ローン選び「ああ勘違い」-1

住宅ローン選びに関する相談業務をしていて、「目が点」になってしまったお客様の勘違い事例をご紹介します。

ああ勘違い、その1
「こんな低金利の時に、金利の高い固定金利を利用するなんてもったいない」

お金を借りる場合のセオリーはこうなっています。

低金利期・金利上昇期=長期固定タイプ、完全固定金利タイプ
高金利期・金利下降期=変動金利タイプ、短期固定金利タイプ

「低金利が長く続くと見込まれる時期」であるなら、変動金利タイプや短期固定金利タイプを利用するのはいいかもしれませんが、本格的な金利上昇や下手をするとハイパーインフレがささやかれる今のような時期に、「金利が高いから固定金利はもったいない」はナンセンスです。

借入期間が短い、返済負担率が低い(収入に対する返済額の比率)など、資金的に余裕のある方は金利変動リスクをとれますが、そうでなければセオリーを重視すべきです。業者の方からそのような説明を受けた場合に、「おかしいな」と思う程度のマネーセンスは身につけて欲しいと思います。




ああ勘違い、その2
「物件の引渡しは4ヶ月先ですが、来週までに住宅ローンを決めて申込む必要があり、その後の変更はできない」

販売の担当者からそのような説明を受けたという相談者がいましたが、これも勘違いです。
金利変動やキャンペーンなどの状況で、毎月、有利な住宅ローンが変わる中、4ヵ月先の住宅ローンを今決めなくてはならず、その後の変更も受け付けない、というのは、生活者の利益を妨げる行為です。契約上そうした決まりがあるわけではないと思います。

そうした言葉を鵜呑みにした生活者は、ローンについてじっくり考える時間も与えられないまま決定することに。また、その選択が変更できないものと信じ込んだまま、ローン実行を迎えることになります。

0.1%の金利差で総額が10万円、20万円軽く違ってくる中、仮に同じ「20年固定を利用する」という人でも、できるだけ有利な選択をする努力をすべきです。

ああ勘違い、その3
「保証料がかかるローンよりも、かからないローンの方が有利」

この勘違いは最近は減ってきたのですが、保証料がかからないだけでは有利かどうかは一概には言えません。保証料がかからなくても、事務手数料が同程度かかる場合もあります。

同じように、事務手数料の多寡や、団体信用生命の保険料についても金利に含まれたり、かからないものもあるので、結局は、諸費用などを含む総返済額で比較をする必要があります。

ああ勘違い、その4
「金利が低ければ低い住宅ローンの方が有利」

「有利」を「総返済額が少なくて済む」と読み替えて考えます。
この前提として、①金利タイプが同じ場合で、なおかつ②その他の諸費用が同じ場合、という条件が整っていることが必要です。

1・金利タイプでいうなら、固定金利より、短期固定の方が金利は低くなりますが、たとえば35年で3年固定を利用する場合、4年目以降は金利変動リスクを負うことに。最終的に有利かどうかは、金利動向次第、ということになります。

2・諸費用も、ローンによってかかり方が違うので、仮に同じ金利タイプで比べようと思っても、金利だけでは比べられないことも。やはり、総返済額で比較すべきです。

ああ勘違い、その5
「繰上返済は、早く、たくさんした方が得」

借りる前に返し方までプランニングすることは大事です。その際に、多くの方は、「とにかく早く返す」「1円でも多く返す」と考えます。それが「トク」であるのは否定しません。数字上は正解ですし、けして勘違いではありません。

ただし、ライフプランとの兼ね合いで考えた場合は、単純に正解とはいえなくなります。
たとえば、繰上返済のしすぎで教育資金が不足して教育ローンを借りることになったり、手元の予備費まで繰上に回した結果、家族が大きな病気をしたときにフリーローンを借りることになった・・・などという事例も現実にあります。

「勘違い」が起きないよう、普段からマネーセンスを磨くことが大事ですね。

 

豊田眞弓(とよだ まゆみ)プロフィール

FPラウンジ ばっくすてーじ代表
ファイナンシャル・プランナー、住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー、家計力アップトレーナー

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