離れて住む親の見守り・介護

人生設計が一変することも

お金と人生設計についてお話しするとき、私は、人生の3・5大支出という言い方をしてきたのですが、そのうちの0・5が親の介護なんです。それほど、親の介護は前もっていろいろと考えておきたいテーマだと思っています。

知人女性は遠距離介護が限界になり、生きがいを持って携わっていた仕事を辞め、実家近くで仕事を見つけてUターンしました。40代を過ぎたころから、いつ起こるかもしれない問題と言えます。

老親と離れて暮らす子どもにまずできること、そしてぜひともやっておきたいことは、介護が必要のない段階からこまめに連絡を取ることです。コミュニケーションを図り気持ちの上での支えになるだけでなく、親に何かあったときに早く気づいてあげることができます。年をとって不安を抱える両親を安心させることや、生活の様子や病気、通院などの状況を把握しておくこと、認知症などの兆しがないかなどに注意しながら雑談します。携帯電話の無料通話や「見守りサービス」、ファクスなどを上手に利用するのもいいですね。

住環境で気をつけたいのは、足元とガスです。帰省したときは、家の中に注意を払い、転倒につながるようなものをできるだけ少なくすることでリスクは減らせます。年をとると、絨毯のたるみや家電のコードなど、ちょっとしたことがころぶ原因になります。床を歩きやすくする、電気の配線を変えるなど、細かいところにもよく目配りをするようにします。ガスレンジは、タイミングを見てIHクッキングヒーター等に切り替えた方が安心だと思います。

介護保険を使えるようになるのは、身体が不自由になったり、認知症の症状が表れたりしてからですが、多くの地方自治体が介護予防のさまざまな取り組みをおこなっています。たとえば、公民館などで集まって介護予防の体操をしたりするのですが公報や市区町村のホームページでチェックして親御さんに伝えることも大切なサポートだと思います。閉じこもってしまうと身体の機能が衰えやすくなるので、本人の趣味に合わせて高齢者向けのサークルなども調べるのも喜ばれると思います。

自治体によっては、緊急通報システムなどを提供しているところがあります。緊急時を知らせる警報器のようなものを貸し出したりしています。また、弁当や乳酸菌飲料の配達をおこなうことで、定期的な「見守りサービス」を導入している自治体もあります。

NPOなどの見守りボランティアや民間の宅配サービスもいろいろあります。有料サービスも多いので、ご家庭の実情に応じて利用するといいのではないでしょうか。




隣近所の人々にあいさつを

最近は、地域のつながりが弱くなって、隣近所がどのような生活を送っているのかも見えにくくなってきました。そのことが、親の一大事の発見を遅らせる遠因になる場合もあります。

たとえばこんな話がありました。Bさんはある晩、隣家からの大きなテレビの音に驚きました。隣家は高齢男性の一人暮らしでお付き合いがありません。子どもさんやお孫さんが時々訪ねてきている様子なので、お孫さんがテレビを見ているのかも…とがまんしていました。しかし深夜になっても大音響はなりやまず、Bさんは警察に通報。実は、高齢男性は1人でいるときに病気の発作で倒れたのです。偶然かSOSか、テレビのボリュームを上げたのです。

大事には至らなかったのですが、もう少し発見が遅かったらと思うと怖いですよね。こんなとき、ご近所とのおつきあいがあれば、もっと早くに誰かが家を訪ねて気づいたかもしれません。地域のつながりがいかに大切かを気づかされる出来事でした。

老親と離れて暮らす子どもにとって、介護や見守りの際、近所の方理解と協力はとても大切です。帰省したとき、手土産を持って親が親しくしている近隣の方にごあいさつし、「何かあったらお知らせいただけますか」と自分の電話番号を手渡しておくのも安心材料です。

親の見守りに協力してくれそうな親戚の人も頼んでおくといいですね。何度も電話して親が出ないようなとき、「ついでの時に、ちょっとのぞいてみていただけないでしょうか」と頼めたらいいですよね。もちろん、甘えすぎないことも大事です。

家族、親戚、本人と話し合い

親が急な病気などで倒れたときは大慌てします。急いで実家に駆けつけても、どこに何があるのかわからず、困り果てることも少なくありません。

そうならないために、日ごろから、健康保険証、かかりつけ医の診察券、薬とお薬手帳などがどこにあるかを親に聞いておくことが大切です。民間の保険に入っているなら、内容なども確認しておくといいと思います。介護が必要になったときにどうするかも、家族、兄弟姉妹で相談できそうなら話しておいてもいいでしょう。ただし、その前に、夫婦でそれぞれの親をどのように見守るか、どういう心づもりなのかをよくよく話し合っておくことが何より大事です。夫婦のコンセンサスが取れている状態で、兄弟姉妹や親と話し合う必要があります。

実際の介護が始まった時は、サポートに回る兄弟姉妹は費用を負担するなど、費用や労力が偏らないように配慮することもポイントだと思います。親御さんの気持ちはどうなのか、兄弟姉妹はどんなふうに考えているのか、親が老いてきたらちょっとづつイメージを作って共有できるようにしておけるといいですね。

介護費用と交通費を軽減する

いよいよ介護が必要となったとき、上手に公的介護を利用することが大切です。親御さんが入院・通院中なら、医療ソーシャルワーカーに相談するのも手です。介護申請をして、要介護認定を受けたら、ホームヘルプやデイケアなど程度に合ったサービスを受けることが可能になります。

残念ながら介護度が上がるにつれて介護保険だけで暮らしていくのが難しくなるのが実態です。見守りが介護になって、だんだん介護度が上がれば、最初は月に1回で済んだ帰省回数もどんどん増えていくことになります。

帰省の回数が増えたとき、いかに交通費を減らすかも大切です。航空運賃の場合は、「介護割引」があり、要介護や要支援の認定を受けた家族は、正規より30~40%安く買えます(事前登録が必要)。マイルなどのポイントや早割なども有効に活用したいものです。電車の場合は往復割引、回数券などさまざまな割引を活用しましょう。高速深夜バスも安く済みます。

介護保険は介護度ごとに決められた金額までのサービスを1割で利用することができる仕組みですが、それで不足するときは、介護サービスを自腹で「買う」こともできますが、その部分は10割負担です。介護度が重くなれば、介護保険の規定のサービスだけで1人暮らしは無理です。家族の手か、上乗せでお金で買い増すか、あるいはケアのついた施設に入るかですが、いずれにしても問題が残ります。特に、公的な介護施設である特別養護老人ホームはどこもいっぱいで、要介護4くらいまで進まないと入れません。サービスを上乗せで買うにも、民間のケア付き有料老人ホームも、大きなお金がかかり、悩ましい状況です…。

いずれにしても、親の介護は突然やってくることも多いので、会社の介護休暇制度や、近隣の高齢者向け施設の視察などもやっておくといいでしょう。

介護退職は、最後の最後の手段と考えるべきです。育ててくれた親への思いを大切にしながらも、その後、自分と家族の人生を立て直す余力を残しておくことも大切なことなのです。「介護を頑張りすぎない」「人生の10割を介護にしない」ことも大事だと、多くの介護経験者が語っています。

【介護保険で受けられる介護サービス】
*住まいのバリアフリー化、福祉器具の設置
*ホームヘルプ、デイサービス、デイケアなどの在宅サービス
*福祉施設や医療施設でのショートステイ
*グループホーム、特別養護老人ホームなど
【その他の公的制度】
*所得税・住民税の扶養控除
*生計を一にする親の医療費控除
*子どもが健康保険料を負担する場合は社会保険料控除
*成年後見制度
*地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)

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豊田眞弓(とよだ まゆみ)プロフィール

FPラウンジ ばっくすてーじ代表
ファイナンシャル・プランナー、住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー、家計力アップトレーナー

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