介護に必要なお金

介護保険とは?

公的介護保険は、要介護度に応じた上限額の範囲で介護サービスを受けることができるしくみです。ケアマネージャーにケアプランを作ってもらいますが、上限を超えて介護サービスを「買う」場合は、全額自己負担になります。また、介護タクシーや配食サービス、紙おむつの購入、認知症の方であれば徘徊対策で警備会社と契約したりなど、そもそも公的介護保険の対象にならないサービスを利用する場合は、当然ながら全額自己負担になります。

住宅をバリアフリー改修する費用や、車いすや介護ベッドなど福祉用具の購入には公的なサポートもあります。バリアフリー改修費は、所定の改修でかかった費用であれば20万円を上限として9割(最高18万円)が支給され、福祉用具の購入費は年度ごとに10万円を上限として9割(最高9万円)が支給されます。福祉用具は介護保険の範囲でレンタルを利用することも可能です。

一時的な出費を除くと、在宅で家族による介護が可能な場合は、介護保険利用料の1割を含めて月3万~10万円程度(要介護度やサービスの利用内容によって異なる)がかかると見られます。ただし、1人暮らしでは、要介護2以上や認知症の場合にはさらに上乗せサービスを購入したり、家政婦を雇うなどで、月負担額はもっと想定しておく必要があります。

介護にかかるお金 =介護保険1割負担分+上限額を超える介護サービス費+介護保険外費用

在宅サービスの支給限度額

要介護度身体の状態(例)1カ月あたりの
利用限度額
要支援1
要支援2
日常生活の能力は基本的にあるが、歩行、立ち上がりなどが不安定で、入浴などに一部介助が必要。49,700円
104,000円
要介護1排泄・入浴、洗顔、つめ切り、 衣服の着脱などに一部介助が必要。立ち上がりが不安定。165,800円
要介護2排泄・入浴、洗顔、つめ切り、衣服の着脱などに一部介助または全面的な介助が必要。自分では歩けない。194,800円
要介護3排泄・入浴についての全面的な介助のほか、 洗顔、つめ切り、衣服の着脱などに全面的な介助が必要。自分で立ち上がりや歩行ができない。267,500円
要介護4排泄・入浴、洗顔、つめ切り、衣服の着脱などの全般 について全面的な介助 が必要。306,000円
要介護5生活全般 にわたって全面的な介助が必要。358,300円

・支給限度額は標準的な地域の例。大都市の場合、介護サービスの内容に応じて利用料が最大12.6%高くなる。
・支給限度額を超えた分は全額自己負担。施設における食費や滞在費などは保険給付の対象外。
・支給限度額の対象となっていないサービス(特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護など)がある。
・現金で給付される福祉用具購入費や在宅改修費は支給限度額とは別枠。

介護施設に入所するという選択肢もありますが、特別養護老人ホームなどへの入居を希望しても空室はほとんどなく、常に入居待ちの状態です。入れれば、費用は月8万~15万円程度で済みますが、要介護4以上などよほど重度でなければ入れないのが実情です。

民間の施設はというと、やはり費用がかさみます。介護付き有料老人ホームは安いところで月15万~50万円など、グレードなどで幅があります。最近は高額な入居一時金は減る傾向にありますが、それでも200万~1500万円ほどの入居一時金がかかります。

優良老人ホームと並んで選択肢に含まれるのが、国が急速に増やそうと促進している「サービス付き高齢者向け住宅」です。入居一時金はないものの、毎月の費用が月20万~40万円などと幅があります。




介護保険のタイプ

公的介護保険で不足する分をカバーするには、単体の介護保険に加入するほか、介護特約を付加する、終身保険を保険料払込満了時点で介護保障に移行する、あるいは貯蓄で備えるといった方法もあります。

介護保険や介護特約から支払われる介護一時金は、住まいのバリアフリー化の工事費や、車いすをはじめ介護用品などを購入する際の費用に充てることができ、介護年金は公的介護で不足する介護サービスを自分で購入したり、介護の関連費用に充てることができます。

民間の介護保険選択のポイント

生保会社、損保会社、少額短期保険会社の介護保障だけを見ても、単体・特約を合わせる多くの介護保険・介護特約があります。商品を選択するポイントは主に次のような点となります。

‣保障期間

定期型と終身型があります。介護リスクが本格的に高まるのが高齢期であることからも、介護保障は終身型が基本と言えます。

‣解約返戻金の有無

解約返戻金をなくして保険料を安くしたタイプと、解約返戻金のあるタイプがあります。低解約返戻金型の商品も増えています。

‣介護一時金の内容

かつては「保険会社所定の要介護状態が180日以上続いた場合」といったものが多かったのですが、現在は「公的介護保険の要介護2以上に認定されたとき」など公的介護保険連動型が増えています。介護一時金のみの商品もあります。軽度で介護一時金が出るものと、重度(要介護4以上)でないと出ないものもあります。

‣介護年金の内容

介護一時金同様、「会社所定の条件」から「公的介護保険の要介護2以上に認定されたとき」など公的介護保険連動型が増えています。給付期間も、10年など一定期間のものや、満了までなど期間が限定されたもの、支払要件を満たす限り支払われるものがあります。介護年金のみの商品もあります。

‣死亡給付金の有無

死亡給付金がある商品とない商品があります。要介護状態にならずに亡くなったときには、払込保険料を超える死亡給付金が支払われるタイプも。中には、介護一時金や介護年金が支払われた分だけ死亡給付金が減っていくタイプもあります。

‣健康祝金

要介護状態にならずに80歳、85歳、90歳を迎えたときには、所定の健康祝金が支払われる商品もあります。

‣掛け捨てタイプかどうか

払込保険料は高くても、要介護状態になってもならずに生涯を終えても払込保険料を超える受取があって元本割れのないタイプと、要介護状態になったときの保障を中心にして保険料を抑えた掛け捨てタイプがあります。

‣保険料の支払い方

保険料の支払い方も、一時払、全期前納、月払、半年払、年払などがあります。「元本割れのないタイプ」は一時払や全期前納も多くなっています。払込期間も、終身払のほか「70歳まで」など所定年齢までの歳満了タイプも。

 

ニーズを本格的に意識するのが60歳前後でもあるため、退職金等で一時払や全期前納をして貯蓄型の商品に加入する傾向が強まっている印象もあります。その場合は、払い込んだ保険料に対してどれだけ戻るのかという「返戻率」に重点が置かれます。

一方で、保障を買う目的で、掛け捨てタイプに加入する場合は、保障内容が適切であるだけでなく、保険料や掛け金が抑えられていて、家計に負担がないことが選択の基準となりそうです

介護は貯蓄で備える手も

介護リスクへの備え方として、介護用に自分で貯蓄をするのも1つの方法です。既にある貯蓄を、通帳を分けて「介護用予備費」あるいは「医療&介護用予備費」などと区分してみるのもいいでしょう。

金額はご夫婦で最低でも300万~500万円、お1人なら300万円を目安に貯めておくと安心度は高まります。もしも民間の介護保険を利用したとしても、医療・介護用予備費と2本立てにしておくとさらに安心です。

これから「老後資金を準備する」という場合は、こうした医療・介護用予備費の貯蓄も見込んで準備することが大事です。

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豊田眞弓(とよだ まゆみ)プロフィール

FPラウンジ ばっくすてーじ代表
ファイナンシャル・プランナー、住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー、家計力アップトレーナー

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